リズミコン Rhythmicon(1931)

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リズミコンは作曲家、ヘンリー・カウエルのアイデアに基づいてレフ・テルミンが製作した、自動演奏リズム楽器の一種である。

楽器名:Rhythmicon
発明者:Lev Theremin
発明場所:New York
発明年:1931

リズミコンの奏法

(図1)リズミコンの鍵盤

(図2)リズム及び音高と鍵盤の対応関係

リズミコンは9個の白鍵と8個の黒鍵からなる鍵盤を有しており(図1)打鍵することでパルスが鳴り響く。

1の鍵盤を打鍵したときに、1Hzのパルスが鳴り響くように楽器が調整されている時、2の鍵盤を打鍵するとその2倍、すなわち2Hzのパルスが刻まれる。

面白いのは、パルスの周波数に比例して、音高が変化することだ。1の鍵盤を打鍵したときに打ち鳴らされるパルスの音高が32.7Hzの時、2の鍵盤に対応する音高はその2倍の65.4Hz、すなわち1オクターブ上となる。

リズミコンは1〜16倍までの鍵盤がある。各鍵盤の打鍵時に鳴り響く音響を伝統的な記譜法に準じて(図2)に示す。打鍵時に鳴らされる音高が自然倍音列に対応していることがわかるだろう。


ヘンリー・カウエルのリズム理論

最初に述べたように、リズミコンは作曲家のヘンリー・カウエルのアイデアに基づいて制作された楽器である。カウエルはNew Musical Resources(1930)において、自然倍音の音程比をリズムとして捉える独自のリズム理論を提唱した。

カウエルのリズム理論をかいつまんで説明すると次のようになる。弾くと1hzで振動する弦があるとする。このときの波長は1secである。仮に1sec=全音符としてみよう。(図3)

(図3)基本振動(基音)

さて、1Hzで振動する弦を弾いたとき、その弦の振動には2Hzの振動や3Hzの振動、いわゆる「倍音(部分音)」が含まれているはずだ。1Hzの基音を全音符に対応させるならば、第二倍音は二分音符、第三倍音は2分3連にならないだろうか。(図3)

(図4)二倍振動(第二倍音)

倍音構成の違いが音色の違いとして知覚されることはよく知られているが、カウエルは倍音構成をある種のリズム・アンサンブル」として捉えたのである。それが(図2)に示したリズム分割である。

倍音列をリズムとして捉えることができるならば、ハーモニーの音程比をリズムに置き換えることも可能であろう。例えば長三和音の音程比3:4:5をリズムに置き換えると次のようになる。

(図5)長三和音のハーモニックリズム

このようなリズムをカウエルは「ハーモニック・リズム」と呼び、Quartet Romantic(1917)、Quartet Euphometric(1919)等、ハーモニック・リズムを用いた作品を作曲している。リズミコンはハーモニック・リズムを機械的に生成するための楽器だったのである。


藤野純也「Pure Dataによるリズミコンの再現」
2014年1月9日 , 六本木Bul-let’s, Pure Data Japan 2nd Session


参考文献

  • Cowell, Henry , New Musical Resources, Alfred A. Knopf,INC., 1930
  • Cowell, Henry, The preface of “ Quartet Romantic,Quartet Euphometric ” Edition Peters, No.66518, 1964
  • Smith, Leland, ”Henry Cowell’s Rhythmicana”,  Anuario Interamerucabi de Investigacion Musical, Vol.(9), pp.134-147, 1973

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