書評一覧

リズム音痴を治したいならこの本を読みなさい


ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング (CD2枚付) (ベース・マガジン)

私は「リズム感が悪い」ことを長い間常に悩み続けてきた。そんな僕が、本書で示されているコンセプトににより、確実な改善の兆しを感じることができたという事実から、自信を持っておすすめできる良書である。

 

決め手となったのは「プライムギア」と名付けられた(おそらく筆者の造語であろう)コンセプトだ。一般に楽器教師は1拍よりも細かい音符を感じて演奏しなさいと指導する。ピアノの4つ打ちを演奏する間、心の中では常に8分音符や16分音符の刻みを意識していなければならない。

当然私もそのことは常に意識してきた。だが、どうしてもうまくいかない。クリックを裏でとる練習などをすると、完全に崩壊してしまう。先生のいうように、拍を分割した細かい音符を感じている。それなのになぜ?

実は「拍を分割」という考え方が落とし穴だったのである。私は演奏中常に感じる細かい音符を「拍を分割したもの」として捉えていたのだが、そもそも拍をきちんととれずに伸び縮みしているのに、不整脈気味な拍を分割したところで、その結果得られる8分音符や16分音符も不安定になるのにきまっているのである。

本書の筆者の提唱するメソッドは、これまで私が行ってきた考え方が逆であった。つまり、拍という大きなパルスを割り算して細かいパルスを感じるのではなく、まずはじめに細かいパルスがあり、それを足し算することで拍を得るのが正しいのだという。

筆者はアナログ時計の秒針の動きを拍に、秒針を動かすギアの刻みをリズムの最小パルスにえ、演奏時に感じるべきリズムの最小単位を「プライムギア」と名付けたのである。

これまでの割り算の考え方をやめ、最小パルスを足し算する「プライムギア」のコンセプトを意識してクリックを4拍目裏のみで鳴らす練習をしてみたところ、これまでの苦労が嘘のように、自分の手が叩き出すビートとメトロノームが合ったのである。

表題にあるように、本書はベーシストを読者として想定しており、中には絃楽器特有の奏法を意識してリズムをとるトレーニングなども含まれてはいるが、私のようにリズムに悩む鍵盤楽器奏者、あるいは他の楽器のプレイヤーが読んでも、そこから得られるものは大きいだろう。