あえて極論を言うが、すべてのバンドマンは最低限の読譜能力を身につけるべきだと考えている。その理由を話す前に、ライブを1ヶ月後に控え、なかなかスケジュールが合わない中でスタジオに集まった、ある社会人バンドAのリハーサルの様子を見てみよう。このバンドのメンバーは全員楽譜を使う習慣がない。
楽譜に不慣れなバンドのリハーサル風景
ギター:「静かになった後の盛り上がりの部分だけどさ、ベースの音なんか違わない?」
ヴォーカル:「今日も登山」のところでしょ」 ギター:「そんな歌詞だったけ」 ドラム:(暇そうにしている) ヴォーカル:「もう一度やってみようよ」 ベース:「どこからやる?」 ギター:「えーと…」 (終了5分前を告げるランプが光りはじめる)
問題点が解決されないまま、スタジオを追い出されてしまった。
時間の浪費はリハの大敵!
忙しいスケジュールの合間をぬって練習を行うアマチュア・バンドマンにとって、いかに1回のリハ充実させるかということが、本番の質に直結すると言ってもよい。先に示した例は、まだ問題が解決しないうちに、撤収しなくてはならなくなり、十分なリハを行うことが出来なかった。
練習に使える時間は、自分たちが思っているよりも少ない。セッティングや撤収の時間が必要だからである。
時間の浪費はセッティングや撤収だけではない。先に示したリハーサル風景のように、種々の確認に手間取ると、それだけで3分は簡単に過ぎてしまう。3分というと短い曲だったら1曲分の長さに相当する。それが積み重なると、貴重なリハーサル時間を莫大に浪費してしまう。
例えばスタジオを120分借り、セッティングと撤収に合計30分、細かな打ち合わせに10分費やしたとしよう。スタジオの利用時間120分からセッティングに必要な30分と打ち合わせに使った10分を引くと、120-30-10=80 、それだけで40分のタイム・ロスとなる。実際はもっとロスが大きくなるだろう。
それではどうすれば、効率よくリアを進めることができるのか。「楽譜を使う」ことである。次に楽譜に慣れたバンドのリハーサル風景を見てみよう。
楽譜に慣れたバンドの練習風景
ギター:「練習番号[D]の3小節前だけどさ、ベースの音なんか違わない?」 ベース:「えーと…いち、にい、さん、そこのコード何?」 ギター:「C#m」 ベース:「あっごめん、オレD弾いてたわ」
楽譜に不慣れなバンドが無駄に時間を費やした打ち合わせが、一瞬で終わっている。それはメンバー全員が共通の楽譜に基づいて会話を進めているからに他ならない。リハーサルに楽譜を用いる利便性はここにある。
もちろん楽譜は完全ではない。楽譜では伝えきれない要素はたくさんある。だったら、楽譜で伝えられる部分は楽譜に任せてしまって。「楽譜では伝えきれない部分」の表現に全力を注ぐほうが良いのは明らかだ。
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