In My Lifeのピアノ音色を再現する

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  In My Life  縁の力の力持ち的役割が多いビートルズ・キーボーディストが拍手をもらえる数少ない曲である。せっかくオーディエンスの注目を浴びるのだから、フレーズだけではなく、あのフォルテ・ピアノの様な独特な音色を再現したいではないか。

しかし、すべてのコピーバンドを見ているわけではないが、ピアノの音色にこだわりをみせているビートルズキーボーディストはそれほど多くないように思われる。だいたい会場に備え付けのデジタルピアノのプリセット1番の音色をそのまま弾いてしまっているのだ。

In My Lifeの間奏のピアノソロに関しては「速すぎて弾けないからテープの回転を落とした」という逸話がお約束のように語られてきた。しかし、僕はこの説に疑問を持っている。あの程度のフレーズをジョージ・マーティンが弾けないとは思えないからだ。

ではなぜ、わざわざ回転を落として録音したのか。音色のためである。若い人は知らないと思うが、フォーク・クルセーダーズの《帰ってきたヨッパライ》という曲がある。この曲のヴォーカルがIn My Lifeのピアノと同じ録音方法がとられている。一度聴いたら忘れられない、とても変な声にしあがっている。

In My Lifeの回転操作も《帰ってきたヨッパライ》と同じ目的で行われたように思う、つまり生ピアノをそのまま録音したのでは得られない、音色を得るために、回転を落として録音したのではないだろうか。実際その音色はピアノというよりも、フォルテ・ピアノに近い音色に聞こえる。


実はIn My Lifeの回転操作されたピアノ音色をシンセで再現するのはそう難しいことではない。プリセットのピアノの音色の波形の読み出しを速くしてしまえば、テープの回転を速くするのと同じ音響効果が得られる。

手っ取り早いのは、ピッチベンドレンジを12に設定して、ベンダーを上げたまま、オクターブ下を弾くという方法だ。それだけで、In My Lifeのピアノとそっくりな音が出せる。ただ、左手でベンダーを操作していると両手が使えないので、演奏中はアシスタントにベンダーを押さえておいてもらう必要がある。

僕はできるだけ一人でなにもかもやりたいタイプなので、プリセット音色をちょっと細工することで、In My Lifeの音色を再現した。これもとても簡単。ベンダーでピッチを上げるかわりに、ピッチ・エンヴェロープを使った。当然全体的にピッチが上がってしまうので、キーシフトで鍵盤と実音が対応するように調整する。

ピッチ・エンヴェロープを使って、波形の読み出し速度を速くする。

それに加え、どうやら回転操作したピアノに、回転操作していないピアノがダビングされているらしい、という話を耳にしたので、わずかに、プリセットのピアノ音色をまぜてみた。するとより雰囲気が近づいた。


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