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Out There Japan Tour 2015 日本武道館公演レポート「御簾の外のポール」

本記事は、2015年4月28日に日本武道館で行われたポール・マッカートニーの公演翌日に筆者のFacebookにアップロードしたレポートである。伝説の武道館公演三周年を記念し、ここに再掲したい。


なぜファンはポールのライブに行きたがるのだろう。自分を振り返って考えてみると、あまりにも偉大すぎるがゆえに、神格化された存在となったポールを、より身近に感じたいという欲求がそこにはある。自分達のために、目の前で、あの名曲を歌ってくれている、そのような実感を得たいのである。

 自分も2001年,2013年の東京ドーム公演を、今回のOut There Japan Tour 2015は、東京ドームだけではなく、大阪ドームを観賞した。だが、そのことで、ポールをより身近に感じることは出来たのかといえばそんなことはない。たしかにライブでは、ポールは自分達の前でYesterdayを歌ってくれる。しかし、それにも関わらず、音響の悪さや距離などの理由により、あのポールがそこにいるというリアリティに乏しいのだ。

結局、巨大プロジェクタと替え玉を使っていても分からないほど遠くにいるポールを交互に見ることで、なんとか自分を納得させる他はない。言い換えれば、これまでポールは御簾を介してのみ接することが出来る存在だったのだ。

Out There Japan Tour 2015の締めくくりとして行われた日本武道館公演は、ポールがついに御簾の外にその姿を現したという意味で大事件と言える。アコースティックギターの弦がフレットに当たるノイズが鮮明にきこえるほどの音響の良さ、《死ぬのは奴らだ》の火薬の匂いを感じるほどの距離の近さにより、ポールのライブを見ているというリアリティを始めて得ることができた。

そのことはオーディエンスにとってのみならず、ポールにもよい影響を及ぼしたと思われる。武道館公演はポールのノリ声の調子、すべてにおいて最良の出来であった。それは、質の高い武道館のオーディエンスの反応をダイレクトに感じられたことによるのではないだろうか。

何はともあれ、ビートルズファン、ポールファンにとって最高の夜となった。今後伝説となることは疑い得ない。


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