Free as a Birdにおける準固有和音の使用法

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はじめに

これまでも何度か、bIII, bVI, bVIIのコードがビートルズ・サウンズ(特にジョンの曲)を特徴付けるコードであることを何度か解説してきました。Helpを解説した時は、「ブルーノートを含むドミナントの代理」としてbVIIを捉えましたが、今回はFree as a Birdを題材に、別の見方でbIII, bVI, bVIIのコードを考えてみましょう。

準固有和音

ビートルズ・サウンズを特徴付ける bIII, bVI, bVIIのコードは同主調からの借用と捉えることができます。これを準固有和音と言います。また、これら3つのコードは同主調の平行調(C dur)のI, IV, Vからの借用として捉えることもできます。

アナリーゼ(Free As a Bird)

2小節目のFが準固有和音のbVIです。聴感上の問題になるので言葉で表すのは難しいですが、bVIが鳴り響いた瞬間、独特の緊張感が生じます。この「独特の緊張感」こそがbIII, bVI, bVIIの特徴です。その緊張感はFの直後のE7が鳴り響いた瞬間に解消されます。

4小節目の頭のIVm すなわち、Dmは最もよく用いられる準固有和音で、In My Lifeでも印象的に用いられていますが、特にビートルズっぽいというわけではありません。
1〜2小節目と3〜4小節目は、準固有和音の箇所以外はまったく同じなので、弾き比べてみるとサウンドの違いがよくわかります。IVmにはbVIほどの緊張感はなくむしろスームーズに流れます。

Free as A Birdのコード進行で面白いのは6〜7小節目です。この部分のコード進行を見ると Dm G C Am と完全にC Durに転調しているのがわかります。これまでの準固有和音は、そのコードが鳴り響いた瞬間に緊張が発生し、次のコードですぐに解消されていましたが、この箇所では緊張が2小節間持続します。ビートルズサウンズを特徴付ける bIIIのコードを主和音とする調に一時的に転調することで、bIII,bVI,bVII特有の緊張感を持続させる、そんな手法です。

bIIIを主和音とする調には,bIII, bVI, bVIIがbiii度調からみたI,IV,Vとしてすべて含まれています。したがって、bIII, bVI, bVIIは同主調からの借用というよりは、同主調の平行調からの借用と考えるほうが自然なのかもしれません。一方IVmは明らかに同主調からの借用です。

8小節目のE7はC durの平行調のa mollのVであり、主調のA durのVでもあるので、自然に冒頭のAに戻ることができます。


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