Help!における旋律とコードの関係—「ジョンらしさ」とは何か

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前回、ドミナントの代理コードとしてのbVIIのサウンドがジョン・レノンらしさのエッセンスになっていることをお話しました。bVIIを用いたコード進行を作ること自体は理屈がわかってしまえばさほど難しくありません。しかし、どうしても「らしくならない」そう思われたかたも多いのではでしょうか。

実はコード進行を真似ただけではジョンらしくはならないのです。今回もHelp!を題材に、前回お話しきれなかった、旋律とコードの関係を解説します。

・Helpを旋律還元してみると…

次の譜例をご覧下さい。これはHelp!の旋律の装飾的な音やリズムを取り払って旋律の骨格を浮かび上がらせたものです。すると驚くべきことに気がつきます。[A]はほとんどCisの音一つでできているのです! 他の音はCisの周りを行ったり来たりしているだけで中心音はあくまでCisのみ。

このような、メロディの音はかえずに、コードをかえることでサウンドに変化をもたらすという手法はI Am The WalrusやJuliaにもみられる手法で、ジョンの特徴の一つといえるでしょう。

続いて[B]を見てみましょう。[B]もやはりE-D-Cis-Hという骨格をコードが変わってもそのまま繰り返しています。面白いのがフレーズの頭のE音とコードの関係です。Bmコードが鳴り響いている時に歌われるE音は非和声音であり、11thのテンションにあたり、かなり強烈な響きがします。Helpの[B]の「ジョンの心の叫び」が強く印象付けられるのは11thのサウンドによるところが大きいとおもいます。

さてコードがGに変わるとEは6thの響きになります。11thほど強烈ではないにしろ、「ビートルズの6」と言われるぐらい特徴的なサウンドです。 そして三回目、コードがEにかわりようやくフレーズのはじめの音がルートに落ち着き、フレーズの最後のHがコードの5thにあたるので、三回目がもっとも安定した響きになります。その後に最も高いA音に跳躍して分散和音の形で下のAに落ち着く。とてもうまくできていますね。


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