Yesterday(The Beatles)のキーボード奏法とセッティングに就いて

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ビートルズのコピーバンドにおいて、キーボーディストが担当するパートは技術的にはさほど難しくないわりに、なめてかかると「感じ」がでない。Yesterdayにおける弦楽四重奏はその典型。

最近のデジタルシンセに入っているストリングスの音色はずいぶんと良くなっているから、それっぽいフレーズを演奏すれば、それっぽい雰囲気は出てしまうのだけど、Yesterdayにおけるジョージ・マーティンのアレンジはシンプルの極みで「弦っぽい美味しいフレーズ」は二回目のサビのチェロのオブリガートぐらい。9割は白玉和声だからどうしてもキーボード臭くなりがちなんですよね。それに加え、普通に聞いているぶんには気がつかないけど、実はキーボードでは演奏することが難しい場面がいくつかある。

「ウィックス役」として参加しているビートルズ・バンド Malus Pumilaのために、Yesterdayを仕込んだので、備忘録もかねて、自分が行った工夫を書いておこうと思う。

・奏法

殆ど白玉のYesterdayのストリングスを「生っぽく」聴かせるための奏法上のポイントは次の二点。

①サステインペダルを上手く使ってレガートで演奏する。そうは言っても、まったく途切れないのは不自然なので「ブレス」を意識すること。

②エクスプレッションペダルの使い方がキモ。少しでも足の動きが止まると、とたんにシンセ臭くきこえる。聴感上ほとんどわからない程度の変化を常につけること。足をとめない。このとき、弓の動き、弓の速度、弓の圧力をイメージすると良い。「聴感上ほとんdのわからない微細な変化」を付けることが基本だが、時にはオリジナル以上に大胆にクレッシェンド、ディミヌェンドを加えると良い。シンセの場合ある程度カリカチュアライズしたほうが「らしく」聞こえる。

・セッティング

最近はとてもリアルな弦のサウンドを実現するソフトウェア・シンセサイザがあって興味があるのですが、自分はごく普通のデジタル・シンセサイザ YAMAHA MOTIF XS7を使っています。

基本となる音色はプリセット音色 ”PRE 4:009 Quartet”を使用していますが、そのままいくつかのヴァリエーションにエディットし、次に示すようにかなり変則的なスプリットをしています。はじめに「備忘録」と書いたのはこのためです。メモしておかないと絶対に忘れる(笑)

MOTIF XS7は74鍵なのですが、みてのとおり全鍵をフルに使っています。Yesterday1曲やるために74鍵を背負っていくのはつらいですが、こうしないと感じがでないのだから仕方がない… アサインされた音色は以下の通り

A:2回目のサビにでてくるチェロのオブリガートフレーズの音色、他に比べて「立つ」ように音量や音色を調整。

チェロのピッチ・エンヴェロープ設定

B:チェロのオブリガートのEb音、ピッチエンベロープでベンドが自動的にかかるようになっている。ちなみにジョージマーティンの自筆譜にも”port.”の指示あり。アフタータッチでヴィブラートの深さと音色、音量がわずかに変化します。

C:プリセット”PRE 4:009 Quartet”をそのままアサイン

D:サビの終わりのチェロのFは手が届かないため、このような変則的なスプリットになった。「この通り」楽譜にかいておかないと、絶対にとっさに演奏できない。(それで大失敗した経験あり)

E:プリセット”PRE 4:009 Quartet”をそのままアサイン

F:ヴァイオリンのフラジオレット(ハーモニクス)。以前は高いA音をホールド状態にした別の楽器の音をヴォリュームペダルを使って加えていたが、こうすればスマートに演奏できることに気がついた。ちなみにフィルターの設定でフラジオっぽい音色にするとともに、エンヴェロープで鍵盤を押さえっぱなしでも自動的に長いクレッシェンドがかかるように設定してある。また、リリースタイムは長めにして、手をはなしてもすぐに音が切れないようにした。

G:プリセット”PRE 4:009 Quartet”をそのままアサイン

第一ヴァイオリンのF音のエンヴェロープ設定

H:Fの鍵盤を弾くとその下のFが鳴るように設定してある。1回目のサビで第一ヴァイオリンがF音を1小節のばしているところで、第二ヴァイオリンが D E F ED と演奏する場面があるためこのようにした。指だけで表現しようとすると、どうしてもここだけ「鍵盤」っぽくきこえる。また1小節かけて軽くクレッシェンドするようにエンヴェロープを設定してある。このように「揺らぎ」を作ることがなにより大事。

I:プリセット”PRE 4:009 Quartet”をそのままアサイン


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